「吹抜け」について
ネットやSNSでの家づくりに関する情報を見ていると、吹き抜けに関する後悔ポイントが頻繁に取り上げられていることに気付きました。そこで、施工者の視点から吹き抜けについてお話ししたいと思います。
以下に、ネットやインスタなどでよく見かける吹き抜けのメリットとデメリットを抜粋してまとめました。
吹き抜けのメリット
・リビングなどに吹き抜けを配置することで、天井が高く開放感が生まれます。
・吹き抜けからの光が一階全体に広がり、明るい雰囲気を作り出します。
・家族同士のコミュニケーションが円滑に行えるようになります。
吹き抜けのデメリット
・リビングで暖房をつけていても暖かい空気が吹き抜けから上に逃げるため、寒さを感じることがあります。
・一階の音や匂いが二階に伝わってしまうことがあります。
・高い場所の掃除が手間がかかります。
ただし、最終的な判断は一長一短であり、各自の好みや生活スタイルによって異なります。
私個人としては、吹き抜けには「アリ」だと考えています。
その理由はと言いますと、、、
1.家の中の温度差を少なくすることができるから
先ほど述べた吹き抜けのデメリットとして「リビングで暖房をつけていても暖められた空気が吹き抜けから上に逃げてしまうので寒い」と記載しましたが、適切な断熱性能と気密性能が確保されている場合は別です。
特に二階建ての場合、階段室と吹き抜けを適切な位置に配置することで、空気の循環を促進し、家の中の空調を効率的に整えることができます。
家の中の温度差を小さくすることには多くのメリットがあります。
例えば私が住んでいる茨城県や隣接する栃木県は、自宅内でのヒートショック関連死の件数が全国的に高い傾向にあります。
これらの問題は、住宅の断熱性能の低さだけでなく、家の中の温度差も関与していると考えられています。そのため、暖房をつけている部屋とそれ以外の非居室の温度差を小さくすることは、健康リスクを軽減する助けとなります。
また、断熱性能が一定水準を満たしていれば、14畳以下のエアコン一台で家全体の暖房をまかなうことができます。このため、個別の部屋ごとに暖房を使用するよりも、光熱費の節約につながるでしょう。
2.家族の存在を感じやすくなるから
先に述べたメリットの中でも重要な点です。
例えば、キッチンで料理をしながらも家族全員の存在を感じられるような間取りは魅力的ですよね。
思春期の子供が自分の部屋にいる場合でも、子供部屋のドアを閉めるだけでプライバシーを確保できます。私は個々のプライバシーを最低限尊重しつつ、家族のつながりを感じられる家が理想的だと考えています。
3.吹き抜けの窓はさまざまな恩恵があるから
当社では、パッシブデザインを重視した家づくりに注力しています。
窓の配置によって熱の損失を抑えたり、風通しを良くしたり、昼間の明るさを確保したりすることで、自然との調和を実現しています。また、吹き抜けを設ける場所によっては、冬の日射による自然暖房(日射熱利用暖房)の恩恵も得ることができます。
ただし、これらの恩恵を最大限に活用するためには、設計者の技術や土地の形状なども重要です。残念ながら、パッシブデザインを考慮できる設計者はまだまだ少ないのが現状です。
以上、私の意見を述べさせていただきましたが、皆さんはどう思われましたでしょうか?
吹き抜けに関しては、「アリ」か「ナシ」と一概には言えません。
お施主様の考え方やライフスタイルによって正解は異なるからです。
私の意見は参考程度にしていただき、最終的には自分の理想のスタイルに合う形を採用していただきたいです!